ベトナム女性人権活動家、突然の拘束 報道・言論の自由への道なお険しく
「暴力と拷問を止めて」と語るフイン・トゥク・ヴィーさん
<西側諸国との関係正常化を果たし、日本からも多くの観光客が訪れる美しい国ベトナム。だが、この国は一党独裁体制であるのは今も変わらない>
社会主義共和国であるベトナムで女性や少数者の人権保護、言論の自由などの実現を目指して活動中の女性ブロガーであり、女性人権活動家でもあるフイン・トゥク・ヴィーさんが8月9日、ベトナム中部高原ダクラク州ブオンホーの自宅で地元警察によって連行、逮捕されたことが明らかになった。
ヴィーさんはNPO団体の「ベトナム女性の人権保護(VNWHR)」の共同設立者の一人で、女性の政治犯や人権活動家を保護する運動に携わると同時にブログやFace Bookなどで自ら各種の問題提起や主張を発信するブロガーとしても知られる女性だった。
ベトナム当局はヴィーさんの逮捕についてその容疑を含めて公式見解を示していないが、治安当局による女性への人権侵害に関して国際的に発信するヴィーさんの「口封じ」が目的とみられている。
ヴィーさんの夫、レ・カン・ドゥイ氏によると8月9日午前7時ごろ、自宅にまず警察官2人が訪れヴィーさんと話しを始め、その後私服警察官を含む約30人が増員され、ヴィーさんの身柄を拘束、連行したという。
さらに1時間後には約40人の警察官による自宅の家宅捜索が始まり、ヴィーさんのラップトップのパソコン、携帯電話、カメラ、書籍や資料、服まで押収して持ち去ったという。
これまでたびたび警察による出頭要請、事情聴取の求めに対しヴィーさんがこれを一切拒否していたことから、同日の強制捜査となったとみられている。
ヴィーさん、最も影響力のある人権活動家
「VNWHR」のホームページにはヴィーさんがかつてアップした「暴力と拷問を止めて」という動画が残されている。動画の中でヴィーさんは切々と訴え掛けている。
「民主主義、自由、人権という価値は皆さんの国では当たり前でも私の国ではとても高い代償を払わなければならないのです」「ベトナムの子供たちは親が目の前で暴力の被害に遭っているのを見て育っているのです」「自由の主張はしばしば妨害され、制服を着た人々によってすら妨害されるのです」「法執行機関は躊躇なく暴力、拷問を加えてきます。基本的人権を取り戻したい。それにはどうかこの動画を皆さんがシェアしてベトナムの暴力と拷問を阻止する声を挙げてほしい」
このベトナムの人権侵害の闇を訴えるたった約3分半の動画が今回のヴィーさんの逮捕に繋がった可能性も指摘されている。